『Tommy トミー』の革新性, ミュージック・ビデオ的表現とは何か

鳥越 雛子

作者によるコメント

イギリスのロックバンド、ザ・フーのロック・オペラ・アルバム《トミー》(1969)をケン・ラッセルが映像化した『Tommy トミー』(1975)には、「ミュージック・ビデオの先駆的要素を持つ作品である」という評価が頻繁に見受けられる。しかしその根拠について詳しく研究し、結論まで導き出しているものは恐らく無い。そこで本論考では、この一作を徹底的に取り上げ、具体的に追究することで本作の音楽映画としての価値を考察した。

担当教員によるコメント

鳥越雛子さんの「『Tommy トミー』の革新性〜ミュージック・ビデオ的表現とは何か〜」は、イギリス映画界の異色監督ケン・ラッセル(1927-2011)の代表作の一本であるロックミュージカル映画『Tommy トミー』(1975,日本公開1976)の成り立ちと作品構造をとりあげた論文です。先行するロックグループThe Who(映画にも出演)のコンセプトアルバム「Tommy」と映画の比較から始めて、近年のケン・ラッセル再評価の研究をも踏まえつつ、本作がのちのミュージック・ビデオ(MV)の先駆的表現であるという独自の観点から、詳細かつ情熱的に論考をすすめた論文で、英語文献のリサーチや当時の文献の渉猟なども含め評価に値する研究です。

教授・西嶋 憲生