田川 舞

担当教員によるコメント

「存在感がある」とは作品評でよく聞かれる文言である。田川舞の仕事からも多くの人が心地よく存在を感じ取っている。彼女の素材(粘土)との対話で偶然に得た方法が大きく作用している。自身と「対等な存在」を表そうと丹念に押し込まれた竹ベラによる連続したスリット状の痕跡である。素材との偶然の積み重ねが、作者の「素朴で温かみ」を求めた必然として残り、形となる。観るものは、そのすべての痕跡を追いかける訳ではないが行為の蓄積を、言い換えれば彼女自身のかかわりの総量に感応して受け取っている。しかし表面のテクスチャーだけで存在感は現れない。表面に単なる装飾として施された文様ではない表層が、作者によって選ばれた形態と分かち難く表わされている。ゆえに我々は強固な存在を見ることができるのである。

教授・井上 雅之