海辺の大聖堂

大森 有佳理

作者によるコメント

かつて大聖堂は礼拝の場としてだけではなく、商いをする場でもあり、人々の社交の場であった。そこで、本提案を現代における大聖堂と位置づけ、「海辺の」と名付けた。

担当教員によるコメント

築地市場は移転問題、跡地計画等で注目の的となったが、そこに勇猛果敢に取り組んだ計画案である。
敷地は壁のない数種類の連続屋根空間から構成される。南側隅田川から望むダイナミックな外観、東側場外施設と呼応した屋根の連続性、西側浜離宮に配慮し高さを押さえた屋根のシルエット等、場所や空間の眺望性を読み解き随所に変化に富んだ空間が構成される。作者は二度にわたり欧州の大聖堂を調査研究に訪れ、大聖堂の様々な歴史をこの施設の屋根空間に織り込むことで、敢えて大聖堂(カテドラル)と名付けることにこだわった。現代人が憩う公園としての安らぎや災害時のシェルター、それらを支える空間の精神性や祈りを表現する。合理性を追求し発展して来た東京の建築空間に、疑問を投げかける力作である。

教授・田淵 諭