おとなの子供の日

佐々木 陸

作者によるコメント

書籍「内的体験」は人間存在の可能性を組み尽くそうとしたものだと、著者のジョルジュバタイユは言いました。私はこの書籍を、人知を超えんとする試みに伴う苦痛の果てに法悦があるという風に読み解き、著者が法悦の言語化を試みたのに倣い、法悦のグラフィック化を試みました。人間の営みや、生死、苦痛と快楽など、人間の条件の根幹をなすものへの理解を深めようとしました。

担当教員によるコメント

ものごと諸事が便利で、且つ機能的であることを求められる時代となった。シンプルを良とし、華飾を無駄としてしまうロジックである。デザインの世界ではこれらへの傾倒が特に色濃い。佐々木はそんな均一化されたクリエーションの氾濫に疑問を投げかける数少ない学生であった。
自身の感覚を信じ、持って生まれた才を持続させることによって覚醒する魅力が表現の世界には存在する。個から生まれる臭いたつクリエーションと言えよう。他の人が練習しても成し遂げることの出来ない“異”の力である。佐々木には思考、表現双方にそれが備わっていた。不器用だがたまらなく暖かいイラストレーション。ユニークな視点で綴られた心打つコピー。卒業制作は、世にもの申す力強い渾身のソーシャル広告である。

教授・澤田 泰廣