れもれも

達本 麻美

作者によるコメント

このアニメーションは夢のようなもので、ストーリーはなく、いつなのか、どこなのか、誰なのかもわからない。夢を見ているとき、その世界は辻褄が合っているようで合ってなく、しかし矛盾に疑問を抱くこともない。留まることなくどんどん進行していく世界に流されていく。そして目が覚めたときにぼんやりと思い出して、おかしな夢だったとようやく気がつく。流れるように常に動く画面で、夢の中にいるような心地になれたらいいと思う。見終わったときに、なんだか変なものを見たなという気持ちになってほしい。

担当教員によるコメント

少女の断面はレモン……そのイメージのみを増幅させ展開させて、このアニメーションはできている。達本麻美はこの構成にいたるまでにいくつもの展開案を思考し、変更し、潰していった。物語としての流れと終結を模索しての工程だが、脳内に現れては消える、漠然としながらも確かな実体を持つそのイメージをどう定着させるかに多大なる時間を費やしたように思う。最終的な尺はわずかに90秒だが、変化し続けるイメージは鮮烈で、時にはエロティックで観る者の心を掴む。レモンイエローとブルーのみでスタイリシュに着色されたその世界は、不安定に浮遊する少女の心象を軽やかに描き出している。もはやストーリーなどは不要で、この断片(であるかもしれないが)こそが純全たる作品である。

教授・野村 辰寿