ひとがたの不安

玉手 夏実

作者によるコメント

幽霊とは、日常の中のふとした不安が想像力と混ざり合って人の形をとったものだと言うこともできます。かすかな物音や視界の端で揺れる影、壁を一枚挟んだところで暮らしている何者かの生活音など、些細なことから膨らんでいく不安を現代の幽霊画として表現しました。恐怖心から生み出された空想は、つい掻き消そうとしてしまうものですが、たまには向き合ってみるのも面白いかもしれません。

担当教員によるコメント

玉手夏実は「ひとがたの不安」というタイトルでイラストレーションポスターと作品集を制作した。特に現代の暮らしの中で、現代人が持っている不安をイラストレーションで表現しようと考えた。直接的な恐怖ではなく、想像によって広がっていく怖さ、さらに全体的に孤独で静かな印象を作り上げ、輪郭を描かずに省き、ぬめりけのある雰囲気を目指した。はっきりしない不安を表すため、怪物の全貌は描かず、部分的に隠しながら表現へと導いた。説明しすぎないことが重要だと考え、原因のわからない音や何かの影から恐怖を膨らませるようにしていかなければならない。出所がわからない音から視界の端に映った影まで膨らませ、説明的表現を省くことで、神秘性のある不安や疑念の創造性に固守した。色彩は意図的にモノクロームを配した。

教授・秋山 孝

  • 作品名
    ひとがたの不安
  • 作家名
    玉手 夏実
  • 作品情報
    イラストレーション
    技法・素材:紙、Illustrator、Photoshop
    サイズ:ポスター=H1030mm×W728mm(10点)/本=H594mm×W420mm(1点)
  • 学科・専攻・コース