らしくない黴

鋤柄 友里花

担当教員によるコメント

社会における女性、つまり「女性になること」には、社会の因習、差別、人々の所有とかかわる、さまざまな問題が潜んでいる。特に「化粧」は、それが女性に対する評価や価値と結びつくことで、女性性の負の側面を強化する。そんな化粧というメディアが衰退させるもの、反転させるもの、そして回復させるものは、一体何なのか。作者は、黴(かび)という身近なバイオメディアを使って化粧することで、その法則=意味を反転させようとする。人類の歴史において、美しさが人々の生活を豊かにしたこともあったが、逆に数多くの不幸を生んできたことも否定できない。電車の吊り広告やテレビコマーシャルだけでなく、街中にエステや痩身のための広告が溢れる、貧しい美的社会に対する強いメッセージを持った作品だ。

教授・久保田 晃弘