Grimm's Fairy Tale

篠原 彩月

担当教員によるコメント

物語は紡ぐものと言うが、「紡ぐ」とは、一本の糸をたぐり寄せて巻き取ることを指すように、物語は一筋の道をたどってゆくシングルタスクであると思われている。篠原の作品では3つの童話物語『ヘンデルとグレーテル』『赤ずきん』『みにくいアヒルの子』の舞台である森が共有されていて、コントローラを操作して森のなかを自由に移動し、同時に3種の物語をウォッチできる。観客は登場人物に近づいて観察したり、森を移動して別な出来事に出会ったり、客観的な立場で物語を同時体験する。同時にいくつもの世界が同時進行であるのは何も特別のことではない。私たちの世界だって今も同時進行で動いている。映画や小説のように1本の糸を紡いでみせるのが、時間の物語だとすれば、篠原がつくりだしたのは立体的な空間の物語だといえるだろう。

教授・森脇 裕之