も(も(も(ももたろう)))

山口 大誓

作者によるコメント

本作品は「タイトルの頭文字」=「タイトル」=「章」=「本文」の4段階でそれぞれに読むことのできる平仮名である。
例えば離れたところから木を見るとする。全体像を捉えて「あれは木だ」と認識する、近寄ってみると幹の表皮や枝からたくさんの葉が茂っている様子が見える、今度は葉を一枚手にとって目を凝らしてみると葉脈が見えてくる。
これらを同時に見ることができないように見るという行為には意識的な、あるいは無意識的なフォーカスが含まれているのではないだろうか。

担当教員によるコメント

山口は常に、多くの人が捉えている当たり前の事象を、どうやって逆転させて価値を創り出すかということに強い関心を持っていたように思う。卒業制作では、よく知られた「ももたろう」という物語を独特のタイポグラフィによって四重の入れ子構造に封じ込めることで、文章を読みながら「部分と全体を行き来する」新しい体験として提示して見せた。何より特筆すべきは、複雑な構造を持つ巨大なこの作品を、自らの手技によって高い完成度で作り上げた強い意志にある。構想から具現化まで、圧倒的な熱量を持って走り抜けた山口大誓に敬意を表したい。

教授・中村 勇吾、講師・菅 俊一

  • 作品名
    も(も(も(ももたろう)))
  • 作家名
    山口 大誓
  • 作品情報
    タイポグラフィ、表現研究
    技法・素材:オックス、アクリルガッシュ
    サイズ:W4000×H5000mm(1点)
    引用:楠山正雄(1983)『桃太郎』青空文庫

    朗読:せいら(IPD VOICE)
  • 学科・専攻・コース