両極性, 境目
樋口 茉莉子
担当教員によるコメント
樋口の砂鉄をつかった作品の前に立つと、見るという能動的な行為が、いつのまにか包まれるという感覚に切り替わっていることに気づかされます。また、仕込まれた磁石についている砂鉄を、砂鉄だとわかっていても、何か別のものとして感じ取ろうとしている自分がいるのです。その別の何かとは、表面的にわかりやすいかたちではあらわれないものであり、直感的に感じ取るしかない裏側に隠れ潜む大きな力(流れ)なのです。何故このような力を樋口の作品から感じるのか、それを解明することはとても困難なことかもしれません。樋口は、自身のテキストの中で、磁力にとてもひかれると書いていました。磁力とは、異種の磁極で引き合う力の働きです。それは世界のあらゆるところに潜んでいますし、地球もまた大きな磁石と言えます。古代ギリシアの思想家ヘラクレイトスは、「相反するものの中に美しい調和がある」と語っています。樋口の表現を解明する糸口はここにあるように思えるのです。
教授・栗原 一成
- 作品名両極性, 境目
- 作家名樋口 茉莉子
- 作品情報『両極性 』
素材・技法:砂鉄、キャンバス、磁石
サイズ:H210×W26×D26cm
『境目 』
素材・技法:砂鉄、キャンバス、磁石
サイズ:H91×W91×D10cm - 学科・専攻・コース
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