川﨑 春希

担当教員によるコメント

これまで美術における視る行為の専制を疑問視し制作を行って来た川崎は、本作において2メートル大のクエスチョンマーク形オブジェを制作し、白い布を被せた不可視な状態を作品とした。「?」とタイトルのつけられた本作に、M.デュシャンによる網膜的絵画批判から観念芸術が導かれていった美術史の流れを読むことはたやすいが、オリジナルの価値批判であったレディ・メードが咀嚼され、一つのスタイルとして定着した現状を踏まえ、彼はあえて視えないオブジェの制作とその完成度に固執した。そして最後に全貌を不可視にする行為を加え、オリジナル制作への批評を顕在化すると共に、視覚対象物を不在の存在性へとスライドさせ、視る行為に根ざした美術作品の価値体系を宙づりにすることに成功した。本作以外にも、ユーモラスなセンスを持って同様のテーマを扱う卒業制作を発表した川崎の、これからの展開に大いに期待する。

教授・笠原 恵美子