おはよう

小柳 春乃

担当教員によるコメント

大山椒魚のように地を這う六足の生物。頭部から尻尾にかけて赤御影石のリズミカルな造形は鋭利な鑿で造形されている。堅牢な花崗岩にあえて赤子のような丸みを帯びた愛らしいフォルムを刻むことで、大きな肉体と未熟な精神との乖離を表現したと言う。古代エジプト、メソポタミアの彫刻やそれを起源とするギリシャ彫刻の類は、最終的には平滑に研磨した表面に着彩が施されるが、この作品のような鑿の叩き仕上げは、水平に研磨された表面とは異なり微細な陰影を放ちながら張力を蓄える。良質な花崗岩が多く産出される日本でも古くから用いられてきた技法である。アフリカ原産の岩石と東洋の技法というギャップが、作品のテーマとも絡み合いながら不思議な世界を造形している。

教授・水上 嘉久