『英雄』 / 『運命』 - 共同(キャスト・スタッフ)卒業制作 演劇公演

担当教員によるコメント

『英雄』では、『ロミオとジュリエット』を下敷きにした群像劇を創作、上演。集団演技、音楽に合わせての台詞回し、巨大な美術の移動と構築。これらの制約を乗り越えて俳優たちは自身の演技、仲間との演技、作品世界を演じ切りました。『運命』では、即興演技による創作やシーンを自身で執筆するなど、俳優としてだけではなく、それぞれが作家としても演劇の創作に関わりました。 同一学年による二作品上演という企画の中で、共演者や互いの作品を意識しあい、限られた時間や空間をやりくりし、自主稽古にも励みました。その経験が、病欠による降板などのアクシデントにも冷静に対処し上演をやり遂げるという地力につながっていたと思います。俳優たちにとって今回の舞台の広さ、観客の多さは初めての経験だったでしょう。その重圧を乗り越えてそれぞれが十二分に実力を発揮していたと思います。

講師・柴 幸男(作・演出)

多摩美術大学演劇舞踊デザイン学科第2期生の卒業公演、柴幸男脚本・演出『英雄』と『運命』が、本年1月12日~14日東京芸術劇場シアターイーストにて上演され、大好評を博して幕を閉じました。2019年卒業制作優秀作品は劇美コースとして、舞台美術ゼミ、照明ゼミ、衣裳ゼミの全員に贈りたいと思います。舞台美術デザインは3名の学生の作品から伊従珠乃さんの作品が選ばれました。3名の学生全員が‘赤い糸’をデザインコンセプトにしてきたことに驚きました。伊従さんのデザインはまったく性格の異なる2つの作品を1つ空間の中でわずかな装置の配置の違いだけで表現をして、銅色の壁と床、赤い紐、血管の模様、2つの大きな階段で、これらの作品の世界観を見事に創造しておりました。これも柴先生とのコミュニケーションとの賜物だと思います。しかしながらこの舞台装置・小道具の製作に携わった舞台美術ゼミ学生達と舞台監督を担当した石橋さんの心強い協力があってこそ、この素晴らしい演出空間が実現できたのです。舞台美術はデザイン画や模型が作品ではありません。舞台装置が照明に照らされて、衣裳を着た俳優がその舞台装置に立ち、なによりも観客がいてこそ作品と言えます。そういう意味で、劇美コース学生全員が本学科の目指す演出空間を自分たちの手で創造したと確信いたしました。

教授・金井 勇一郎(舞台美術)

当学科は学生が空間デザインの創作が出来るようにする事を目的としている。照明ゼミ生は卒業制作に於いて、授業で繰り返された実験的照明デザインの自己構築完成を最終的な目的としている。4名のゼミ生は、小俣さんが「運命」加藤さんは「英雄」、齋藤さんと三澤さんは舞踊卒制を担当し、全員が責任ある卒業制作のデザインをする事が出来、各々4年間の集大成として劇場やスタジオで奮闘した。どんな芸術に於いても「完成」はないように照明デザインにも完成はない。が、肝要なのは他者性である。他者が認識して初めて「作品」と評価され「敬意」に繋がるのである。照明の成すべき使命は、ハプニング溢れる舞台作りの中、初日と云う期限付きの劇場でのデザインを「完成」に辿り着けるようにと様々な想像と創造をする事である。果たしてドラマツゥルグに対応しているのだろうか?演出意図に適っているのだろうか?出演者の演技に応えられているのだろうか?舞台美術と衣裳を反映しているのだろうか?大体「あかり」として成立しているのだろうか?と自問自答を繰り返し劇場に於いて自らに立ち向かう。さて照明デザインは「完成」に近付けたか?果して評価は「卒業制作優秀作品」とは大変晴れがましい事。しかし「完成」ではない!もっと出来たかも?もっと考えられたかも?もっと深く感覚出来たかも?との自戒は事後にも必要であろう。「作品」を「人生」にと置き換える事が出来るならば、自身の人生と云う作品の「完成」の目的の為にも4名の其々の道での更なる克己と謙虚な自戒を願い、空間演出者として自ら開けた扉の先にある輝く未来の「完成」をひたすら祈るばかりである。

教授・成瀬 一裕(照明)

素材と技法をミックスアップすることで表出する多彩な質感。
素材や技法自体を開発しようとする取組み。
衣服が内包する表現力を遊び尽くすデザイン。
デザインをリアライズする方法そのものがコンセプトと表裏を成す。
印象に残る豊かな表現が演劇の時空間を埋め尽くした。
企画広報・パンフレット編集・票券管理・フロント運営・カンパニー運営等々を担う制作部は、 集団制作となる演劇公演の要として活躍。
全席指定による有料公演を大入りに導いた。
制作過程にもフォーカスしたパンフレットは記憶に残る。

教授・加納 豊美(衣裳・制作)

作品情報

作・演出 柴 幸男
演劇(『英雄』120分 / 『運命』70分)
期間:2019年1月12日・13日・14日
会場:東京芸術劇場シアターイーストスト

『英雄』出演:安西 摩樹/池田 優也/大髙 珠希/大塚 祥恵/乙津 香里/金枝 希/神谷 春希/川﨑 瑠香/カリム 詩音/佐々木 弥生/鈴木 望生/田村 陽大/田元 麻衣/中村 里佳/那須野 綾音/藤井 海成/船山 瑛生/干川 耕平/柳瀬 奏恵/吉田 茉由/吉村 優花

『運命』出演:阿部 美月/新井 恵理子/伊東 明澄/岩田 里都/尾田 美帆/金子 満咲/久保 桃香/竹内 亜理沙/柄本 龍杜/西 岳/水野 由希菜/山本 悠/LOW KEN HO

演出助手:副島 純令(『英雄』)

振付:酒匂 雛子(『英雄』)

美術プラン:伊従 珠乃(『英雄』 / 『運命』)

美術:石橋 侑紀/伊従 珠乃/太田 空見/加藤 萌/今野 彩花/鈴木 あさひ/星 祐貴子/山本 果歩/渡邊 悠

照明プラン:小俣 夏海(『運命』)/加藤 芙悠(『英雄』)

照明:小俣 夏海/加藤 芙悠/齋藤 桜子/三澤 真由

衣裳プラン:海沼 康太(『英雄』)/桐原 梓実(『英雄』)/佐々木 瑛里(『運命』)/里見 柚香(『運命』)/吉村 咲輝(『運命』))

衣裳:海沼 康太/桐原 梓実/後藤 瑠里/佐々木 瑛里/里見 柚香/山下 純奈/吉村 咲輝

舞台監督:石橋 侑紀

制作:浅井 彩/有馬 華穂/カリム 詩音/芳野 広太郎

演劇舞踊デザイン学科の卒業制作について

演劇舞踊デザイン学科は、感性豊かな身体の表現者、創意豊かな空間を演出するデザイナー等の育成を目的とした学科です。それらの専門性から演劇舞踊コースと、劇場美術コースを設けカリキュラムを展開しています。
卒業制作は、学びの集大成として、演劇公演、舞踊公演、映像美術作品展を企画制作します。演劇公演、舞踊公演は、両コースの専門ゼミのコラボレーションによる取組みです。

卒業制作 演劇公演
演劇舞踊コース・演劇ゼミ/劇場美術コース・舞台美術ゼミ・照明ゼミ・衣裳ゼミ
2019年1月12日(土)〜14日(月) 全6ステージ
『英雄』3ステージ 『運命』3ステージ
東京芸術劇場シアターイースト

卒業制作 舞踊公演
演劇舞踊コース・舞踊ゼミ/劇場美術コース・照明ゼミ
2019年1月25日(金)〜26日(土) 全4ステージ
多摩美術大学上野毛キャンパス 演劇舞踊スタジオA

卒業制作 映像美術ゼミ作品展
『2期生 卒業制作展』
劇場美術コース・映像美術ゼミ
2019年1月18日(金)〜 20日(日)
多摩美術大学上野毛キャンパス 3号館103実習室