人生樹

山本 梨乃

担当教員によるコメント

ケニアのキリンと蛍、タイのコムローイ、ニュージーランドの湖の鳥、沖縄のウミガメ、ベトナムのサーカスと蓮の花、そして広がり伸びていく大樹のてっぺんで天を仰ぐ人がいる。幼少期をケニアとベトナムで、高校生から日本で暮らした作者の色鮮やかな22年が重なり合い物語として結実している。緯糸をつづら折りのように織り込む伝統的な綴織技法を用い、幅2mを越す1枚に織り上げた力作である。近づいて見ると海と空の青の中にも息づく繊細なかたちが見え隠れし、丁寧な織目は呼吸しているように一定のリズムを刻んで美しく心地よい。異文化を旅するように成長してきた山本さんの軌跡であり、彼女の朗らかさ、伸びやかさと、未来へどこまでも咲いていこうとする力と希望に溢れている。

教授・川井 由夏