和光同塵

担当教員によるコメント

1、2年次の頃から勤勉な学生であった。3年次で彫金クラスを選択し、細かい仕事を続けていたが、正直、その情熱と完成作品との差異が中々埋まらない印象を覚えた。4年次の前期制作で、傾けてきた努力が実り、徐々に作品に強さが顕れ、その表現を卒業制作まで繋げた。素材を何とか思う姿に近づけたいという純粋さから、様々な方法で金属にアプローチし、実験と発見とを繰り返した。細かな具象表現自体は金工分野において目新しいものではないが、長い時間を費やして真面目に繊細に僅かな変化を凝視し、感じ取り、扱いきるという、素材表現者としての基本的で尊い作業を続けた点は評価に値する。それは大変瑞々しい制作姿勢であった。今後、この素直な作者には、モチーフや表現内容に食い込む独自性を自然な形で見つけていってほしい。

非常勤講師・留守 玲