女体文字

中村 衣里

作者によるコメント

人の身体は美しい。日常でふと、得る感動を私も表現したいと思いました。柔らかく、硬く、美しい身体の輪郭を追い、それらを重ね合わせて「女体文字」は生まれました。人の身体――性別を取り巻く、様々な葛藤やしがらみを一度忘れて、「女体文字」という抽象を通し、肉体の魅力を改めて見つめていきたいです。

担当教員によるコメント

美意識に満ちた作品です。中村衣里さんが追究し、表現した文字の美しさは、一般的にいう文字の美しさとは次元のまったく異なるものでした。それは次のような手順によって生まれています。(1)中村さんが美しいと感じる女性の身体のかたちを写真におさめる。(2)写真におさめられた身体の美しさを線描として再表現する。(3)線描を再構成して文字を作る。――こうしてできあがった文字は、女性の身体と文字のイメージのどちらにも由来しています。両者をつなぎとめているのが中村さんの美意識です。あるいは、両者の融合した姿が、中村さんの美意識の姿です。卒業制作という場で、自己の美意識に正面から向きあい、それを作品として昇華しえたことを称えます。

准教授・佐賀 一郎