あの子

尾関 花那

作者によるコメント

この町には大きな影がずっとある。少女と影の、関係しているようで関係していないような生活の一部を描きました。もともと海や飛行船など大きなものを見ると漠然と不安になります。セリフも物語性もないアニメですが、気持ちのいい風が吹いたこの町を感じていただけたら嬉しいです。

担当教員によるコメント

巨大な女の子が大空に浮かんでいる。この鮮烈なイメージをどう映像化するのか?尾関花那は、物語を構成する上で、幾通りもの設定と展開を考えぬいた。その結果できたのが詩的で衝撃的なラストシーンを持つこのアニメーションである。水彩の優しいタッチで描かれたどこか異国の日常的な風景。風がそよぎ、巨大な影がゆっくりと草原を移動していく。観光客らしき人々は、巨大な影の正体を追っている。主人公にとっての日常は、異邦人にとっての非日常である。それは観客も然り。ラストで、風にたなびく草原で上空を見上げる主人公の女の子からカメラは上空へパンアップし、観客はその正体を知ることになる。柔らかな女性的感性で描かれた独特の幻想アニメーションの逸品。

教授・野村 辰寿

作品動画