Ordinary Life
齋藤 俊希
担当教員によるコメント
マンションに一人で住むことに通底する心情としては、全く周りの住人を知らない不安や孤独がある。
マンション暮らしの最大のトラブルの原因は騒音だと言われている。隣室や上下階の生活音を騒音として不快に感じる状態があるのだろう。この作品は、時には騒音とされている生活音に関して、視点を変えると「楽音」や「サンプリング・ミュージック」へと転換する試みだ。鉛筆で原稿を書く音、サッカーボールのリフティング音、ピアノの音がリズムを刻み始め、ウェイトリフティングでバーベルを落とす音、料理をする音、自撮りするシャッター音、などの住人達の生活音がスリリングな組曲へと変奏される。
10年前の2010年頃、人と人の関係が希薄となった日本の社会を「無縁社会」と名付けたが、現在では情報技術の進化により、自分にとって好ましい情報だけに取り囲まれて、人は「フィルターバブル」の中に閉じこもって生きているとイーライ・パリサーは「閉じこもるインターネット」で提唱した。「環世界」の中で心地いいコミュニティの中で充足している個人がたまには無意識でも共鳴し合う関係性を生み出すのを、齋藤俊希の映像インスタレーション「Ordinary Life」を鑑賞しながら夢想した。
教授・寺井 弘典
- 作品名Ordinary Life
- 作家名齋藤 俊希
- 作品情報映像インスタレーション
技法・素材:Premiere Pro 、Photoshop、プロジェクター
サイズ:H2000×W3000×D3000mm - 学科・専攻・コース
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