Afria

田原 花楓

担当教員によるコメント

描写力のあるイラストレーションのシリーズで3作品。ここで描かれた異国の光景はどれも独特の雰囲気をもって賑わっているように見える。田原さんは現実には存在しない架空の文明都市を細密に想定し、その都市の成立や、そこで暮らす人々の生活様式を描くことで、空間と物語の世界観を構築する。これまでのイラストレーションや絵本の制作でも、全体の世界観を作りあげてから、そのなかで繰り広げられるエピソードを拾い出すことで、そこに表れる空気感そのものを包み込むように表現できることを確認してきた。
もし現実の国家や地域が、違った歴史線をたどったとしたら、どのような繁栄の仕方をしただろうか、というのが今回の想定である。西洋の文明化の傾向のなかでアフリカ文化の特徴が絶妙に受け継がれ、複合化された文化様式のなかで人々が生活している様子がうかがえる。比較文化論的なアプローチで描くその光景のなかに、彼女の独特なユーモアセンスが、いたるところから読み取れて興味深い。またそれと同時に、少し皮肉を交えた文明批判的な鋭い視点も、その根底に読み取れるのである。

教授・森脇 裕之