東風

村田 遥香

担当教員によるコメント

残された和紙の地が澄み渡る風となり、描かれた一隅を心地よく吹き抜ける。右上から左の端へ。視線を誘いながら画面を横切る動的な構図は、更に伸びやかな空気感をこの場所に与えている。季節の変わり目。明るい光のなかで、いのちが一斉に動きだす。喜び満ちた芽吹きの春の囁きが、清涼な風に乗って聞こえてくるようだ。水墨表現を用いながら技術の伝承に留まることなく、墨の濃淡を巧みにこなし見事に描き切った村田の力量を讃えたい。作者の精神がみずみずしく宿った秀作である。

教授・武田 州左