departure

小寺 今日香

担当教員によるコメント

小寺さんはこの一年間で三点制作している。そこまではモチーフとして花が使われている事が共通している。その内の二点の作品には鉄と目の細かい金属製の網が使われ、美しく儚く感じられる花が作られている。もう一点の『departure』と題された作品の花は、生花を直に型取りをして、ブロンズに置き換えられている。直取りされることによって花の時間が止まり、私にはどこか死を連想させる。それに比してただ四角いだけの無機的であるはずの箱状の鉄は、艶かしく艶かに立ち上がってくる。熱と鉄の共同作業によるものである。勿論、共同作業を支える小寺さんの力があってのこと。鉄の変化を支え見守る姿勢が、制作の醍醐味である。小さなややもすると同じに見えてしまう変化を抑えた高揚感を秘め、見守りながら制作を続ける。彼女が目指した「切ないけど、美しい」という複雑な感情を、このような制作態度が表現する事を可能にしている。

教授・多和 圭三