卒業制作優秀作品集2021
芸術学科

玉城 夏美

アラビアンナイトの世界とイスラーム美術について

本文ではイスラーム世界における説話集として知られる「千夜一夜物語」の物語中に記述されるランプや陶磁器などの工芸品に着目し、実際のイスラームの工芸史や時代背景とを参照し、御伽噺に描かれる世界観および当時の生活風俗における工芸品の役割について考察をすることを狙いとする。現代におけるペルシャ及び中東地域は現在の紛争等による情報ばかりに照準が当てられる傾向にあるがイスラーム美術史上における中東地域の古く肥沃かつ壮美であった中東の軌跡を辿る。

担当教員によるコメント

本論文は『千夜一夜物語』のなかの「アラジンと魔法のランプ」「魔法の絨毯」「シンドバッドの冒険」という3つのよく知られた物語に絞り、そのなかで重要な役割を果たす工芸品は実際、どのようなものだったのか、イスラーム工芸史を探った労作である。たとえば「魔法のランプ」。挿絵やアニメーションなどの刷り込みによって、わたしたちは金属製のランプを想像するが、中世イスラームという時代背景を鑑みると、艶やかなガラスでできたモスク用吊りランプだった可能性が浮上するという。この物語が千年間かけて紡がれた多文化的な説話集であることを振り返ると、別の研究方法もあり得たかもしれないが、さまざまな資料に丁寧にあたって思いがけない成果を得たこの論文を、高く評価したい。

教授・金沢 百枝

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