江縫 祐吾

作者によるコメント

ガラスが割れるという事に着目して制作した。
割れることは自然に生じるように思えるが、何かの動作が加わらなければ起きることはない。
それは自然的とも人工的とも言える。
そうした断言をすることのできない、不確立な世界観を表現した。

担当教員によるコメント

江縫は自然と人工のイメージを様々な相対的な表情を持つガラスを使って表現しようとして来た。立方体状に削り、磨き上げられたガラスの塊は彼にとってロゴスの象徴であり、それにガラスにとっての自然現象の象徴でもあるひび割れを起こさせる。シンプルな考えだが、これを実現するためにはとても注意深い仕掛けが実は必要になる。立方体状に鉄型に鋳込まれたガラスを削って磨き上げ、それを再度炉に入れて然るべき温度で部分的に金属製の道具などで冷ましひびを起こさせる。いわばわざと徐冷に失敗している状態を完璧な状態のガラスに起こさせるわけだが、自然現象を意図的に起こさせるためには、そのためのデータと実験が必要になる綿密な作業である。こうやって意図的に起こさせた美しくも危うい自然現象は、ガラスの立方体の中で捉えられ、自然というもの、となる。

教授・髙橋 禎彦

  • 作品名
  • 作家名
    江縫 祐吾
  • 作品情報
    技法・素材:ガラス
    サイズ:(左から)
    各H80×W80×D80mm、H180×W180×D180mm
  • 学科・専攻・コース