調(ととの)える街

長島 未侑

作者によるコメント

カタチ、記憶、匂い、人々の流れ、など、風景は様々な要素から成り立っている。
しかし、風景を創り出す上で、わかりやすい視覚的な要素にいつも目が向いてしまい、感覚的な要素は置いてけぼりになってしまっている気がする。
そこで私は、風景に広がる「音」に注目をした。
普段何気なく聴いている、鳥のさえずり、人々の話し声、車の走行音、川のせせらぎ、木の葉が風に揺られ擦れる音、そんな「街の音」こそが風景をより良くする重要な役割を担っているのではないか、と考え、名古屋市全域を対象地に独自の「サウンドマップ」を制作し、人の感情と音の広がり方の関係性を表現した。
また、その中の一部の過疎化の進んだ街に目を向け「音」によって街を「調える」提案をしてみた。

担当教員によるコメント

サウンドスケープとランドスケープ、音の雰囲気が似ている。聞きたくない音も耳に飛び込んでくる、見たくないものも目に飛び込んでくる、そんなところも似ている。そんなサウンドスケープに対して彼女は魅力的な街には、いい音が溢れているのではないかと仮説を立てる。
生まれ故郷である名古屋を舞台に二十数箇所もの地区をサンプルにして独創的なサウンドマップとその評価を行なった。そして、魅力を失った街にはいい音が無いらしい。ならばと、以前から気にかけていた商店街を復活させるための計画を提案する。街に溢れる子供の声、笑い声、鳥の鳴き声に虫の音それを実現させるためには、豊かな自然を挿入すること、お年寄りや子供連れのお母さん達や学校帰りの子供が寄り道できるようなフトした場=人々の居場所を創り出す提案をおこなった。音と風景との華麗なる関係がチラリとみえた。

教授・吉村 純一