うろこ

北村 優奈

作者によるコメント

亀が泳いでいる。甲羅の中で身を護る。そのままどこまでも泳いで行ける。どこにも行けない彼女は、ここで亀の夢を見ている。
彼女は彼女の言葉を話し、自分の小さな頭で考える。それは不格好なかたちをとって、彼女のうろこになる。無意識のうちに、誰かの作った世界に住み、誰かの言葉を話すのは、死んでいることと同じだから。

担当教員によるコメント

新型コロナウイルスの世界的な流行を受けて、世の中にはウイルスに関するデマの拡散やネガティブなニュースなどの情報も新型コロナウイルスと同じくらい蔓延している。北村は、そんなウイルスやネガティブな情報から自分を守るための「うろこ」を制作した。これは彼女にとっての亀の甲羅や「うろこ」である。「うろこ」を身につけた彼女は水槽の中で、何日も巣ごもりを続け、その様子を写真に収めた。これが彼女なりの表現者としてのメッセージである。

教授・大貫 卓也