青もみじ

杉本 萌恵

作者によるコメント

「青もみじ」は、低い重心と穏やかな右上がりが特徴の、独特でありふれた本文用仮名書体です。「見本帖」には、字形の変遷と太宰治の著作『かすかな声』を掲載し、「制作記」の本文と一緒に、組見本として発表しました。活字が意味や言伝を持つことはありません。

担当教員によるコメント

重心を低く抑え、右肩上がりの線をゆるやかにする、画線のうねりや抑揚をできるだけすっきりさせる──非常に明確なコンセプトを体現したこのひらがな・カタカナ書体は、非常に個性的です。それでいて本文用書体として長時間の読書に耐える安定性と普遍性があります。本文用書体のデザインには個人性と普遍性の相剋がつきものです。恐らく、杉本さんの内部でもデザイン観の絶え間ない検討があったはずです。杉本さんは非常に豊かな造形力と感受性を備えた学生でしたが、その杉本さんが本文用書体を卒業制作のテーマとしたこと、そしてこれだけの書体を作り上げたことに感動と敬意を覚えずにいられません。そしてまた、そのことが、今後の杉本さんにどのように影響し、どのような作品をもたらすかを、楽しみにせずにはいられません。

准教授・佐賀 一郎

  • 作品名
    青もみじ
  • 作家名
    杉本 萌恵
  • 作品情報
    タイポグラフィー
    技法・素材:書体=Illustrator、Glyphs/見本帖=Illustrator、和紙、インクジェットプリント、シナ材、糸綴じ/制作記=Illustrator、書籍用紙、インクジェットプリント、手製本(糸綴じ)
    サイズ:見本帖=H300×W1080mm/制作記=H190×W125mm
  • 学科・専攻・コース