Le Retour

塚原 菜緒

作者によるコメント

大きな街の片隅に暮らす、駆け出しの画家の主人公は、近頃どうしても絵を描く意欲が湧かない。そんな折、幼い頃の自分が描いた絵を偶然目にする。それをきっかけに彼女に訪れる、短くも、不思議で、素敵なできごと。大好きだったこともいつしか純粋に楽しめなくなる、ということは誰にでもあるように思えます。そんなとき小さく背中を押してくれるのは、あの頃の自分自身だったりするのではないでしょうか。

担当教員によるコメント

的確なカットワークで物語を語ることに秀でた塚原菜緒。3年生から本格的に初めたアニメーション制作で絵コンテ制作、作画を着実に身につけ、本作にたどり着いた。スランプに陥った画家の原点回帰と復帰をかわいいキャラクターを使って描いて見せたファンタジー短編だ。ヨーロッパ風の街並みや登場人物を水彩の淡い色調で描いた現実世界と、キャラクターに誘われ訪れた先をクレヨンで描いた空想世界の対比と融合が効果的にストーリーを支えている。比較的オーソドックスな作りではあるが、観客に展開をキチンと理解させる演出は見事である。それぞれの物語にふさわしい世界観でアニメーションを作る楽しさと技術を身につけた彼女が新しく挑む新作に期待したい。

教授・野村 辰寿

作品動画