室生犀星詩集

宮脇 菜緒

作者によるコメント

岩波文庫「室生犀星詩集」に収録されている室生犀星の詩1つにつき版画を1つ制作し、本にまとめたもの。当時の本に近づけたかったため、版画を表現方法に選んだ。
自分の中で特に印象に残っている犀星の詩の題名に全て「青」が入っていたため、版画は全て青の単色刷りにしている。
大学進学前から持っていた、「美しい本を自分の手で作りたい」という願いをまだたった1冊ではあるが、叶えられたように思う。

担当教員によるコメント

入学前からの「美しい本を自分の手で作りたい」という明確な目標が見事に結晶化された。学生としての課題設定は、何らかのシミュレーションになりがちだ。そのようなアプローチではプロの現場で生み出される成果物に太刀打ちできない。そのことに早い段階で気づき、「今だからこそできること」の直接性へと向かった。室生犀星は時代を超えて読み継がれる詩人であり、わたしたちが生きている間はもちろん、何世代も先まで、繰り返し参照されるべき言葉を残している。そのような対象を選んだことにまず驚かされたし、一作一作の詩に対して独創的な木版画を添えて行くという、シンプルながら強度ある方法に目を見開かされた。不透明な時代だが自信を持って歩みを進めてほしい。

教授・佐藤 直樹