誰かの地球の裏側

岩﨑 風湖

作者によるコメント

世界とは自分そのものだと思う。人の数だけ世界があって、
それらは複雑に絡み合っているのに、ある意味では一片たりとも交わってなどいない。
「それぞれの世界が同じ宇宙に存在しているだけで、
同じ世界をみている人なんてどこにもいないじゃないか。」
10 年前、私は道端の鳩にそう溢した。鳩は何も言わなかった。
今私の立っているちょうど地球の反対側。
そこにいる人と私の何が違うというんだろう。

担当教員によるコメント

岩﨑風湖の写真には彼女固有の強い眼差しが写り込んでいる。どこにでもありそうな庭先の風景から、電信柱の根元にわずかに生えている雑草へ。風をはらんでアスファルト道路の上を浮遊している透明なビニール袋の不思議な存在感。誰も注意を払わない、それらの存在に執拗な眼差しを向けそれらの物を浮かび上がらせている。強い意志で切り取られたそれらの写真は、見るものに彼女と同じ経験を強いる。しかし、それは窮屈な経験ではない。あくまでも素直で率直な経験だ。その庭先の写真を見ているうちに、暖かな冬の陽射しを背に受けて、見知らぬ民家の庭先に立つ自分が、じっと見つめる先の物たちの有り様をまざまざと浮かび上がらせてくる強い眼差しに不思議に嬉しい共感を覚えるのだ。

教授・上田 義彦

  • 作品名
    誰かの地球の裏側
  • 作家名
    岩﨑 風湖
  • 作品情報
    写真
    技法・素材:35mmネガフィルム、半光沢紙、Illustrator、InDesign
    サイズ:写真=H1030×W693mm(1点)、H551×W369mm(3点)、H360×W240mm(9点)、H240×W360mm(1点)/本=H364×W257mm(1点)
  • 学科・専攻・コース