ILLUSION

SUNG DOOHYUN

作者によるコメント

僕は小学6年の頃、水泳講習の時に、プールの中で溺れそうになった経験がございます。溺れた時にみたゆかのタイルに描かれていたクジラの絵は、幼い時の自分にとってはとても恐ろしい存在として記憶に残っています。大きくなってからはだんだんその記憶も薄れてきたと信じていましたが、似ている場面に出会うと、またトラウマのように、その頃の感覚を呼び起こしていました。

このように、トラウマというものはいつまでも自分の心のなかに存在しているというメッセージを表現した作品です。

担当教員によるコメント

前半の冒頭から約1分48秒間が小学6年の時に深いダイビング用プールで溺れたトラウマの記憶、そして後半の3分2秒間は大人になり、そのトラウマの記憶は薄れて過ごしていたが、深海を探査するアトラクションで、また記憶が蘇る。前半の床に描かれたクジラが、生きたクジラとして印象深く登場し、なぜか海上のボートで漂流している。説明的では無く、インスピレーションに富んだ映像と音響で、印象深く演出している。特に前半の自由自在に動く視点移動や、描画、ぬいぐるみ、生物としてのクジラまで、作者の得意な3DCG表現が申し分なく生かされている。やはり記憶の中の脳内イメージは自由だ。そして後半の大人になってからの世界は、象徴的なシーンを繋げ、海中深く潜行する艦内の主人公に募る不安感を冷静に演出している。まさに主人公は意識と無意識の相互介入や混濁、その境界を彷徨っている。我々の意識と無意識はよく氷山に例えられる。水面上に顔を出す氷山が顕在意識で、水面下の巨大な氷の塊が潜在意識というわけだ。その境界を、いわば海面を漂流し、彷徨う感覚を作者は見事に描き出している。

教授・寺井 弘典

作品動画