B(  )K, 紙の束に空洞を彫刻する

永井 浩

作者によるコメント

紙は二次元的でありながら、僅かに体積があります。
そして紙を重ねると本となり、紙は確かな体積をもった「めくれる立体」となります。
では、ページごとにモノの輪郭をくり抜くとどうなるでしょう。
紙の塊に、空洞の輪郭を彫刻する。
B(  )Kは、新しいモノの切り口を映し出す、めくる彫刻です。

担当教員によるコメント

本の中に空洞を閉じ込めたい。本を情報の蓄積ではなく、立体を入れ込むことはできないだろうか。アイデアが決まるまでも時間がかかったがそれをどう表現するのか。そうして永井の長く、あてのないデザインの旅が始まった。立体スキャンのデータ化に協力してくれる会社を探し、百枚程度のレイヤーにわける。それを一枚一枚レーザーカットする。それを層状に積み上げて本(紙の集積)にする。執念とも呼べるほどの気の遠くなる作業だった。しかしレビューで出来上がった本をみて一同、絶句した。「こんなに苦労したのに全く凄さがわからない。」見せ方をもう一度考えてみよう。それから永井はまた長い映像の旅に出た。コマ撮りで一枚一枚紙を積んでいったのだ。1000枚近い紙を一枚一枚積んでは撮影、積んでは撮影の作業。凄まじい作業量だったがこれで一気にブレイクスルーすることができた。博物館の展示のようにグリッドシステムに沿って丁寧に配置していった。中村勇吾教授がいうように結果的には映像がメインの作品に見えたかもしれない。他はその映像制作でできた美しきピース、破片に見えたかもしれない。でも、それでもかまわない。さまざまな要素が最後に「バチッ!」と音がするぐらい合わさった瞬間だった。また本をレントゲンのように透過して撮影し、中の空洞をくっきり浮かび上がらせたビジュアルも印象的なものになった。B( )Kとタイトルが決まったのもこのあたりだったか。いいコンセプトにはいいタイトルが必ずつく。いいタイトルは明解なコンセプト表現ともいえる。卒業して社会にでても幾度となく壁にぶつかるだろう。でもなんのことはない。こんな数々の「壁の超え方」の味を知っている永井に怖いものはないのだ。アートディレクターとして頭角を表す日も近いだろう。楽しみだ。銀賞おめでとう。やったね。

教授・佐野 研二郎、非常勤講師・小杉 幸一、非常勤講師・榮 良太

  • 作品名
    B(  )K, 紙の束に空洞を彫刻する
  • 作家名
    永井 浩
  • 作品情報
    技法・素材:紙,製本ビス、Photoshop、Illustrator、myVGL、phoenix nanotom m(CTスキャン)
    制作協力:株式会社JMC
    サイズ:H232×W64×D20mm(1点)、H225×W295×D40mm(2点)、H136×W117×D40mm(2点)、H253×W210×D40mm(2点)、H48×W115×D36mm(1点)、H47×W135×D36mm(1点)、H700×W4500mm(1点)、H297×W210mm(1点)
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