CUBE, 成長するテディベア

岡本 菜々

作者によるコメント

ゆりかごから家庭、幼稚園から学校、そして社会へと、人は成長すればするほど広い世界や環境が必要です。卒業を控えてまた新しく広い環境を必要としている今、その構造を可視化して表現したいと考え制作しました。

担当教員によるコメント

岡本はいつも静かな森の中にいるように沈黙の中、自己を表現する。完璧な形で。それでみる人を黙らせる。完璧な説得力で。人間は成長すればするほど、より広い世界や環境が必要となる。それを表現するのに 「複数のアクリルキューブに大きさの違うテディーベアをいれる。」わかるようなわからないような初期アイデアだったが、どんなアドバイスをしようとも岡本は返事をすることもなく、静かに頷くだけだった。外からのコメントを求めず、聞かず、変えず。初期段階から明確なもの、確信が岡本にはみえていたんだろう。すごく太い芯があり、ぶれない姿勢に驚いた。卒制のレビューをDプロジェクトの3年生にみてもらったが、なんの説明なしに一番人気を集めたのが岡本の作品だった。それぞれが個々に自由に想像して理解できる作品だ。みた人のそれぞれの感情を大きく包み込む空っぽの箱のような大らかな作品だった。手がきれるほどシャープなアクリルボックスの精度、岡本の手作りのテディーベアのゆるいかわいらしさと、それがぎゅうぎゅうにつめこまれたインパクト。見事なコントラストだった。一見かわいらしいが油断してよくみると実はじわりと怖いこの見事な完成度で、プレゼンテーションのときの教授達の反応が一気に沸いたのが爽快だった。そこには岡本のほほえんでいる姿があった。2年間、どちらかというと地味な制作が続いている印象だったが着実に手を動かし力をつけつづけていた。その蓄積が一気に開花したんだろう。TOP21、ほんとうにおめでとう。

教授・佐野 研二郎、非常勤講師・小杉 幸一、非常勤講師・榮 良太