FIGURE, ボールペンを用いた猫の造形美をテーマに制作したアート作品

上田 海帆

作者によるコメント

私は猫がもつ造形美に惹かれています。動物の逞しさや強かさもありながら、女性的で優美な印象も持ちあわせた彼らの造形に興味を持っています。昨今の猫の可愛いイメージが多い中で私が考える猫の「力強くて」「優美な」イメージを形にすることで、見る人が猫の持つ魅力を新しく再発見してもらえたらと思っています。

担当教員によるコメント

これらは上田が飼っている猫ということだがサイズ(B0より大きい)やクオリティー(ぜんぶ手描き)がここまで圧倒的だと高度なコミュニケーションデザインだと思う。一番天井の高いスタジオの一番奥の黒い布の前に、軽やかにワイヤーで吊り下げられたこの巨大な猫の作品群は、猫の動きの一瞬を切り取ったデッサンのようでもあり、コンセプトをつきつけられる現代アートでもあり、突き抜けたイラストレーションでもあり、みた人々を驚かせ、近くに寄って見たくなるほど視線を誘導させる強いコミュニケーションデザインでもある。筋肉や毛並みを丁寧に追っていくことでいまにも動きそうな躍動感があり、誰もが猫の頭や背中を撫でた時のあのゴツゴツした感覚を思い出させるほどの描写力だ。ミケランジェロのダビデ像のようにディフォルメしたことでよりリアリティを出すことに成功している。直接書いているから出力されたものより、その密度、解像度がクリアでやっぱりタブローというのは理屈を超えて強いと実感する。ハッチングの密度は作業に費やした時間の集積だ。コピー&ペーストで簡単にできるところを「あえて」やらない。ブルーナがミッフィーを驚くほどゆっくりと描いていたように微妙な感情の起伏や呼吸による線の揺れも作品に取りいれている。この「あえて」が上田の作品の強さとなっている。作品の高さをまちまちに設定した展示も猫の動きのように軽やかだ。もちろんすべて上田の周到な計算だ。その計算、設計こそがデザインなのだ。みる人の反応を丁寧に想像しながら、愛をこめて猫をこのサイズでひたすら描き続ける。白い紙から愛猫の姿を彫刻刀で思い出とともに優しく掘りおこしているような作業だ。その集中力と執着と愛が上田の作品が愛された一番の理由だろう。卒業して、この一連の作品がどう展開、進化していくのだろう。楽しみにしています。TOP21、ほんとうにおめでとう。

教授・佐野 研二郎、非常勤講師・小杉 幸一、非常勤講師・榮 良太

  • 作品名
    FIGURE, ボールペンを用いた猫の造形美をテーマに制作したアート作品
  • 作家名
    上田 海帆
  • 作品情報
    技法・素材:紙、ボールペン、鉛筆
    サイズ:W1100×H1753mm、W1100×H2095mm、W1022×H1712mm、W830×H1820mm、W1083×H2332mm、W1074×H2135mm、W1148×H2113mm
  • 学科・専攻・コース