「our Home」

園田 将久

作者によるコメント

アトリエを一つの家の敷地と見立てて制作した。アトリエに全てが収まる家ではなく、アトリエの外にまで繋がっている家を想像しながら制作した。家の床と壁は斜めになっていて、アトリエに対して水平でも垂直でもない。この中に設置した家具も水平垂直に沿わない形になっている。また、家に設置した窓からは外の景色を見ることができる。アトリエと制作した家、設置した家具、窓から見える景色、それぞれの異なる水平垂直が混ざり合う空間は、人の感覚に疑問を持って制作した作品だ。

担当教員によるコメント

園田の卒業制作は部屋の中にさらに建築空間を作った大がかりなものだ。入ると庭があり、そこに木材で作られた玉石が敷かれている。ペタペタ音のする踏み石を辿り、庭を渡ると建造物にたどり着く。中に入ると自分の平衡感覚が少し狂っているのがわかる。これは園田の大工仕事が手抜きなわけではなく、この建築の水平を3度傾かせているからだ。これにより見慣れた信頼すべき建築空間が、違和感のある新たな空間として体感できるのである。この作品は、日常に少しの変化を与え、あたりまえなことに新たな視点を注ぐことに成功している。さらにすぐれているのは、部屋に入ってすぐわかる木の香り、音のする踏み石、手作りの扇風機による風、足裏から伝わる平衡感覚と視覚の差から生まれる変調など、訪れた人が全身で味わう作品に仕上がっていることだ。

教授・菊地 武彦