わたしをつくりあげるものたち

髙橋 ランディ

作者によるコメント

わたしをつくりあげるもの。
それは例えば人々の視線。
人によって視線をどう感じるかは様々だが、
私はあまりに緊張しやすいために人前に出ることを恐れてしまう。
それは例えば欲望。
生きるものは誰しもが抱くものだ。
それを良いか悪いかを決めるのは容易なことではない。
それは例えば多面性。
良い人が必ずしも悪いことをしないということはなく、またその逆もあり得る。
どれが本物なのかと問われたならば、その全てが私であると答えるだろう。
それは例えばこの身に流れる血。
誰一人として同じ人間はいないが、しばしば人は同調することを望む。
しかし望みながらも自らの意味を求め、
同じであったとしても違ったとしても迷い争うことがある。
それらを、素材や技法と相談しながら形にした。

担当教員によるコメント

肌の色は人種により異なるが、唇の色は人種によって大きくは変わることはない。この作品ではその唇が黄色やブルーなどの不自然な色で描かれている。怒っているような唇や微笑んでいるもの、色以外は妙なリアリティがあり、中央の唇からはさらにもの言いたげな鳥が3羽、唇から発せられた言葉のように飛び出している。インパクトのある作品だが、出自と向き合い、アイデンティティに関する問題意識をベースに制作をしてきた高橋は、見慣れたものとは異なることを「不自然」と捉えることの意味をこの唇たちを通して鑑賞者に問うているのではないだろうか。唇は、優しい言葉や人を傷つける言葉、どのような言葉でも発することができる。この色とりどりの唇が発しようとしているのは、差別や偏見のない、寛容と思いやりのある言葉である。

教授・吉澤 美香

  • 作品名
    わたしをつくりあげるものたち
  • 作家名
    髙橋 ランディ
  • 作品情報
    素材・技法:インスタレーション
    サイズ:可変
  • 学科・専攻・コース