さんらん

松宮 うらら

作者によるコメント

私はとても山が、自然が好きです。
自然の前では全て等しい存在になれると思います。
自然を前にして、自分自身の迷いや戸惑い等、持っていたく無い感情がいつの間にか消えてしまうことがあります。
そんな自然の大きさを表現したいと思って制作しました。

また、社会の中で過ごすうちにも様々な感情が生まれたり消えたりします。
卒業制作では、その繰り返しで発生した熱を前面に出すことを目標にしました。

担当教員によるコメント

パッチワークと絵画の妙な関係が視線を惑わす。部屋の手前側の照明が、吊るされた赤い山の絵を照らしている。奥の黒い山のパッチワークは、あたかもその影のようである。影は窓に吊るされ逆光状態。赤い山の絵の奥の空間は、どうやら夜の設定なのに窓に近くて戸外から光が差し込む。こんなややこしい状況だが、良い山の絵を描きたいという素朴な思いもここにはある。ところが、保守的な額に入れられパッチワークの壁に並べられ強引に吊るされ、どんどん不穏な気配を漂わす。世間で人気の富士山の絵を素直に愛でることはできない。松宮さんならではの、アンビバレントで掴みどころが無い魅力的な空間。どこまで計算しているかはわからないが、彼女が感じている複雑な現実がこれを実現させているのかもしれない。

教授・髙柳 恵里