部屋, ブックスタンド
石松 涼太郎
作者によるコメント
どのような境遇であっても、安全に、穏やかに、主体的に過ごしたい時間、場所が欲しいというのは共通の願いであり、ひきこもりの人々も同じように望んでいる。精神的に傷つき、疲弊しきった彼らは自分の部屋ですら安心できる居場所とは言い切れない。「外側」で生きる人達のような、自分らしい生活するために、少しずつ変わろうとしている。
担当教員によるコメント
部屋の中を描くと、住む人間の生活感がどうしても出て、何か意味ありげな物語的な様相が生まれてしまうことがある。そして、その絵を見る者にとっては、物語的枠組みの中からしか表現の在り方を探ることができなくなってしまう。しかし石松さんの絵は、このような狭義な表現へとは向かっていないように思える。石松さんの絵から最初に受ける印象は、厚い絵具と多色によって描かれた均質な画面である。この均質化がものの持つ意味を解体し、世界のすべてを無化させようとする試みに見えるのである。石松さんの絵には窓が必ず描かれている。窓の内側と外側の異なり、この社会的現実(意味)は、私たちの生活に大きな責務としてのしかかる。しかし、石松さんの絵は、窓の内側も外側も、異なりながらも同時にひとつであり、またそういった世界もあるということを気づかせてくれるのである。
教授・栗原 一成
- 作品名部屋, ブックスタンド
- 作家名石松 涼太郎
- 作品情報『部屋』
素材・技法:キャンバス、油彩
サイズ:H130×W162cm
『ブックスタンド』
素材・技法:キャンバス、油彩
サイズ:H194×W259cm - 学科・専攻・コース
- カテゴリー