逆たち, どんなに遅くなっても/良い埃

矢野 紗季

担当教員によるコメント

「どんなに遅くなっても」の人物は、自らが掘った穴の中から、自らがその掘った土から作った土の像によって地上に引き上げられようとしている。モノ派の関根伸夫の「位相―大地」に着想を得たネガとポジの反転がこのような解釈を受けるとは!矢野さんの驚嘆すべき発想力とその絵画制作の力量は常に私に衝撃を与えてきた。天才的な才能の持ち主と言って良い。褐色のドットを身にまとうその土の像と、人物(矢野さんかな?)の手には赤と黒のエネルギーが天より供給され続ける。大画面はティントレットのような狂気じみた嵐の感性によって一気に仕上げられている。一方の「逆たち」は、十字型が多重化され、中央に黒いコビトが怪しく鎮座する。バックの渦状の反復が一気に画面を活性化させ、そのコビトの異常な存在の強さを脳裏に刻むしかない。私たちはコロナの時代のひとつの絵画の在り方を目撃している。

教授・中村 一美

  • 作品名
    逆たち, どんなに遅くなっても/良い埃
  • 作家名
    矢野 紗季
  • 作品情報
    『逆たち』
    素材・技法:キャンバス、油彩
    サイズ:H116.7×W91cm

    『どんなに遅くなっても/良い埃』
    素材・技法:キャンバス、油彩
    サイズ:H259×W194cm、H162×W130.3cm
  • 学科・専攻・コース