卒業制作優秀作品集2021
絵画学科版画専攻
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- 石川 愛巳
疑懼の彷徨
技法・素材:エッチング
サイズ:H318×W238mm、H260×W260mm、H307×W268mm
自分の中にある、日常における不安や恐怖などの気持ち悪さの塊をテーマにしたシリーズ作品。自身の臓器の形、自分が気持ち悪いと思うイメージの中に、それぞれのテーマに関連することわざから構成したイメージを配置することで、自らが感じている負の世界感を表現した。
(左)就職活動において感じた、テンプレに当てはめていく自分や、求められる形に成る自分など、自分だと思っていなかったいくつもの自分が存在していることに対する気持ち悪さを表現。
(中央)常に誰かに見られている感覚や、その視線を意識してしまうことで、押し殺され、偽りの自分を生み出だしてしまう現象を表現。
(右)自分が考える前に無意識的に入ってくる情報に埋め尽くされ、自らの思考が奪われていく感覚を表現。
担当教員によるコメント
石川は、日常における不安や恐怖などの気持ち悪さの塊をテーマとし、3点の連作で表現した。コロナ禍の中、不安や恐怖は平時のそれもより強く、彼女の感性を揺さぶったことだろう。どんな恐怖や不安があったのだろうかと眼を凝らして画面を見てみるが、不思議と目を覆いたくなるようなイメージは存在しない。不安や恐怖を連想させるステレオタイプ的なイメージからあえて離れ、自身が体験した思いを個々のユーモラスなイメージに置き換え、それらをコラージュし画面を構成し画面作りを行っている点が魅力的である。美しい描画で小さな画面にびっしりと描かれた個々のイメージは、それぞれがひとつの言葉のようでもあり、言葉を追うようにイメージを読み解いていく面白さがある秀逸な作品である。
准教授・大矢 雅章