Understandings

花岡 和羽

作者によるコメント

間接的な情報の盲信は、真の「理解」から遠く偏見の土壌を生む。過去の強権的な指導者の狂気的な差別主義、現代の匿名のフェイクニュースのように。私は、文字通り向き合うことで、それまでの偏った視点からは想像すらできない個人の姿・価値観を深く理解する経験があった。当事者の思いや行動の理由を直接聞くことに意味があり、向き合うことが真の「理解」の近道になると考える。実体験を元に、「偏見」の要素とそれを越えて存在する「理解物」を描き、7つのテキスタイルに発展させた。多様な素材と美しく鮮やかな色彩が、型にはまることのない豊かな理解の世界を表している。

担当教員によるコメント

ロンドンは、様々な文化的・社会的背景をもつ人々が共生する都市だ。花岡さんは、そこで交換留学生として学び、衝撃をうけ感動した異文化体験から制作に取り組んだ。留学中の実体験から、間接的にものごとを知ることは偏見を生む危険がある、当事者の思いや行動の理由を直接聞き、向かい合うことが真の「理解」への近道だと思い至った。花岡さんは、心の中で偏見が理解へと転換するさまを鮮やかに表現しようと試みた。多彩な質感の布に染、プリント、刺繍を複合的に駆使し、一心に縫い続け、かたちが立ち現れた。ユニークなかたちや装飾的な文様、触覚的な表層と独特の色遣いに花岡さんの豊かな造形力と熱量がみえる。現時点での彼女の渾身の作であり、つくることで発言していく人であることに違いない。

教授・川井 由夏