卒業制作優秀作品集2022
芸術学科

内田 稜真

実践する音楽 Vaporwaveとアンビエントの思想を巡って

資本主義経済の発展とともに、音楽の在り方は変化した。作品の創造性を決定するのは作品そのものではなく、むしろ消費する私たちの側である。音楽が人々の感情に訴える力をもつ限り、情動は生成され、資本主義のもとで管理される。このような現代社会において、消費者であり、鑑賞者であるわたしたちはどのような態度をもって作品に関わるべきか。本論考では、「実践」というキーワードのもとに、Vaporwaveとアンビエントミュージックという2つの音楽を取り上げ、考察する。

担当教員によるコメント

Vaporwaveなるアンダーグラウンドな音楽ムーブメントについて卒論で書きたいと聞き、「とても指導できない」と思いましたが、それがアンビエント音楽をルーツに持つと聞いて「理解可能かも」と思い直しました。音楽ジャンルを社会思想史的に考察すること自体、とてもむずかしいアプローチですが、書籍や雑誌記事を渉猟しながらその輪郭を手堅く描出しています。ギー・ドゥボールやマーク・フィッシャーが登場する中盤で、内田さんのいう「ポスト資本主義」がはっきりと像を結びます。後半はエリック・サティやジョン・ケージらを論じながらアンビエント音楽史を語るが、前半と後半で異なるアプローチをアクロバティックにつないでおり、論文というよりは読み物として刺激的なものになっています。

准教授・金子 遊

  • prev
  • next
  • 石田 彩
  • 内田 稜真
  • 齋藤 鈴花
  • 佐藤 駿
  • 安江 真吏亜
  • 山上 琴乃香

学科TOPへ