木曽御嶽信仰とパーシヴァル・ローエル

佐藤 駿

作者によるコメント

木曽の山岳地帯に佇む御嶽山は、中世に修験道の行場となり、江戸後期になると登拝講社として一般に登られるようになり活気を見せた。その講社である「御嶽講」は、「御座(おざ)」という特異な神憑りの儀礼を特徴とする。明治に日本へ来た米国人天文学者パーシヴァル・ローエルは、御嶽で見たこの儀礼に強い関心をもち、神道と日本人の精神を分析したものとして著作を残した。本論では木曽御嶽信仰の歴史とローエルの著作『オカルト・ジャパン』について考察する。

担当教員によるコメント

佐藤駿さんの卒業論文「木曽御嶽信仰とパーシヴァル・ローエル」は、中世から木曽御嶽山で営まれてきた修験道のなかに生まれた「御嶽講」を特徴づける特異な神懸かりの儀礼、「御座(おざ)」の諸相を論じたものです。先行研究の綿密な調査による主題の掘り下げ方が大変優れていますが、そのなかでも特に、日本が近代を迎えるとともにいち早くこの儀礼に注目したアメリカに生まれた天文学者、パーシヴァル・ローエルの著作に注目した点が高く評価されました。神秘と科学を両立させた外部からの眼差しによって、日本の内部からだけではなかなか迫ることができなかった、芸術の発生にも密接に関係するであろう「憑依」の核心が明らかにされています。

教授・安藤 礼二