卒業制作優秀作品集2022
芸術学科

山上 琴乃香

表具が本画に与える効果の体系化と可能性

表具は本紙を装う役割も担うが、取り替えられる前提の下で通常記録に残されてこなかった。本稿ではそれらの状況を辿り作品毎に記録を取って表具の位置付けを再考した。記録は様相とともに表具のあり方も示す。本紙をどのように捉え・見せようとしたかがそこに表れ、改装されれば本画の印象は変化する。掛軸は当初から作者以外も関わり自覚的に姿を変えてきた特殊な形式と言える。解釈を窺わせる表具もまた解釈可能な作品として捉え、その記録を残していくことが求められる。

担当教員によるコメント

紙や絹に描かれた日本の伝統的絵画は表装されることが前提となっているが、美術全集や展覧会図録では本紙のみが図版として掲載され、特別な意図がない限り表具全体が紹介されることは滅多にない。表具は経年劣化や所蔵者の趣味によって改装されるため、表具そのものを研究することは専門家でも難しい。山上さんは果敢にも絵の内容と表具との関係を個別に解釈し、全体を俯瞰することを試みた。そのために日本絵画の展覧会に足繫く通い、撮影禁止の美術館が多い中、表具をスケッチして詳細な記録を忍耐強く取り続け、その分析を行った。本論では残念ながら新知見を提示するまでには至らなかったが、卒業論文のためにできることは全て実践し、その情熱と努力は十分評価に値するものと考える。

教授・木下 京子

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