群生
太幡 心
作者によるコメント
人との距離が離れ群れることが避けられた現在。道の植え込みでは小さな生き物が身を寄せ合い、じっと息を潜めていた。ちっぽけで頼りない様子であったが、その姿には静かな、力強い生命の営みが見られた。傍でうごめく彼らの姿を私は、視覚だけでなく身体全体で感じたいと思ったのである。
今回の制作では、一つ一つの作品を下から上へ、有機的な膨らみを持たせながら作り、自身の制作空間を埋めつくすように進めていった。
生き物が身体をもたげ群れる姿に、弱々しくありながらも、内側からでる力強いエネルギーを感じたい。
担当教員によるコメント
太幡は「最初のコンセプトと現れるもののギャップに悩まされ続けました。」という。思いつき、着想だけでは作品にはならない。着想、素案、感触のようなものを丹念に紡いで、素材を軸に組み立て、あるいは削いで作品を構築していく、これはデザインにもアートにも応用できる多摩美の工芸の発想の技術論だ。諦めないでチャレンジし続けた本作で、太幡は「最初のコンセプトからはどんどん離れて、制作方法、形も大きく変わりましたが、思考と検討を続けて、自身の持つエネルギーを余すことなく出すことができたと思います。」と語り大作をものにした。見る者にせまる「蠢く力」が彼の制作のドライブ感を示している。思考だけ、素材だけによらない太幡独自のバランスの取り方をさらに磨いてもらいたい。
教授・尹 煕倉
- 作品名群生
- 作家名太幡 心
- 作品情報作品形態:床置き
技法・素材:陶、錫粉
サイズ:H1080×W640×D640mm、他5点 - 学科・専攻・コース
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