小説のなかで見た風景の展示

新山 さゆり

作者によるコメント

これは、二十の文学作品の断片と、その断片から私が感じた風景や空間の形をあらわしたものです。
私を魅了した風景の多くは、物語のなかにありました。実在したりしなかったりするその風景は、間違いなく眼前に現れたものです。
私たちは語られる言葉から風景や空間を読み取り、自らの経験を元手に想像していくことができます。そして、感情や人の心の動きを表した言葉に、空間らしさを覚える人もいます。
風景や空間には様々な要素があります。スケールや素材、色や音。時間や、そこで起こる出来事も空間を構成する大切なパーツになります。欠けている要素を想像し、そこにどんな人がいるのか、どんなことが起こるのか想像すること、それは空間をつくっていくことの第一歩ではないかと私は考えています。

担当教員によるコメント

ゼミでの新山さんとの会話は、毎回とても楽しい時間でした。言葉や絵で共有するというよりお互いにふわっとした感覚を共有しながら進めてきました。作品の解説については作者本人に譲りますが、その解説は、さりげない文章となると想像します。その「さりげなさ」こそが、この作品の本質でもあるので、どこまで種あかしをしてよいのか悩むところですが、「小説のなかで見た風景の展示」という「さりげない」タイトルひとつにしても何回も会話をしたと記憶しています。また、展示する模型の大きさや質感、配置する模型の間隔や高さ、説明文のフォントやサイズ、行間や文字の濃さ等、徹底したスタディの結果としての「さりげなさ」がこの作品の魅力だと確信します。

非常勤講師・田嶋 豊