不在の六角形

秦 裕一朗

作者によるコメント

1909年の療養所の開設に伴って、整備された堀と切断された街道。
地中に埋没している六角形の堀を掘り起こし、旧街道に接続することで、個々人の日常的な場所と全生園とを接続する提案。

担当教員によるコメント

エスキース毎に、引用される思想家や評論家のセンテンスにハッとさせられ、その生みの苦しみを共有できたことはたいへん嬉しく思う。
建築をここまで自虐的に分析し、自らを戒める学生はなかなかいない。その結果おぞましい解決に結びつけることができたと思う。
建築で表現できることへの限界でもあり、矛盾した物言いだが、その限界を超えられるのも建築だ。
このおぞましさは、自虐性とともにある。サイードの哲学を具現化できたのではないかと思う。

教授・松澤 穣