つっこむ

浅海 優里

作者によるコメント

VRを利用し、バーチャルで漫才のツッコミをリアルに体験できる作品です。漫才は本来見て楽しむものですが、体験することによって漫才の新玉面白さや楽しさ、難しさを感じてもらえるのではないかと考えました。また、コロナウイルスの影響でコンビの間にアクリル板を挟んで漫才をするという光景を目にする時期がありました。直接的に人と触れ合わず漫才を行うことのできるシステムを作りたいというのが制作のきっかけとなりました。

担当教員によるコメント

カラオケのような字幕を見ながら相方のボケに対して”つっこみ”ができる、このVR漫才作品を体験してみると、テンポよく“つっこむ”のはとても修練が必要な事を痛感する。日本の漫才は伝統芸能の萬歳にルーツがありながらも、直接的には19世紀後半のイギリスのミュージックホールとアメリカのビルボードシーンで始まったdouble actと言われる2人のコメディアンの掛け合い形式から来ている。また、英米の他にドイツ、韓国、中国などの国々にも似たような2人組の話芸があり、この濃密な会話の応酬の演芸を人は楽しんできた。人の最小コミュニティ単位は家族と親友や相棒になるのか?相棒との濃密な会話演芸は圧政への抵抗であったり、その時々のトピックや、言うに言えない状況を笑い飛ばす演芸は庶民の自由な発話の場だったのだろう。covid渦になり会話が減った現在、自由で活発な会話の場に観客を参加させることが作者の狙いだ。VRゴーグルをつけて相棒との痛快な言葉のやりとりのドライブ感を充分に味わった。”つっこみ”のタイミングについていけない、しどろもどろな私を見ている観客に笑ってもらえて、”失われた会話の楽しさ”が回復するように感じた。

教授・寺井 弘典

作品動画