曖昧な私のかたち

南雲 未希

作者によるコメント

遠くから、内側から、見ている。私、わたし、ワタシ…。意識するほどその「私」が見えなく、わからなくなってくる。輪郭がぼやけていく感覚。他者と私。どこからどこまで私なのか。ここにあるのは私なのか。私とは何だ。知らない顔、たくさんの言葉に揺らぎすぎる私。そんな私の芯を見つけたい、築きたいとする思いが、学部四年間の制作の根源にあった。この卒業制作は、母と私、各々の幼い頃の家族写真を用い、母と私との境目に焦点をあてて描いたものだ。私というかたちは私としてのかたちだけではなく、あらゆるものと重なりあった、どこまでも曖昧なもので、その曖昧な境目をただただ感じるばかりだった。

担当教員によるコメント

「母と私、各々の幼い頃の家族写真を用い、母と私との境目に焦点をあてて描いたものだ。」と、語る作者は、極めて誠実に世界や自分、母親や家族を眺めている。永遠に答えの出ることのない世界を、その表面を正確になぞる様に、その表面から浸透して内側に入り込むように、何かを捉えようとしている。コロナ禍の世界で、我々もやっと感じ始めた何かを、この若い才能は、かけがえの無いものとして描き始めたと思う。懐かしいような、今まで感じていたが見たことのない新しい表現の可能性を感じる。
果たして我々が意識しているこの世界はいったいどのようなものであるのか、現実と認識しているものは、どこまで確かなものなのか。そんなことを考えた。

教授・岡村 桂三郎

  • 作品名
    曖昧な私のかたち
  • 作家名
    南雲 未希
  • 作品情報
    技法・素材:岩絵具、水干絵具、高知麻紙、雲肌麻紙

    『どんなものにもなれる』
    サイズ:H1820×W1450mm

    『狭く広い日々』
    サイズ:H1820×W1250mm

    『重ね』
    サイズ:H1820×W1600mm

    『知らない顔』
    サイズ:H1820×W910mm
  • 学科・専攻・コース