静緑

朴 秦賢

作者によるコメント

うっすらと日差しが降り注ぐ、森閑とした苔の森。苔は森の全体を纏って、静かに自分たちの生命力を拡張させていく。
人の手が届いていない森の中で、樹木は堂々と自分の身を伸ばす一方、寿命が尽きた樹木は色が褪せ、淡々と死を受け入れる。
再びその死を肥やしとして新たな生命が芽生えていく循環の場。その様子が僕にとって人々が生きていくことと違わないと感じた。
嫌なことも全部飲み込んでくれそうな勢いの苔を見ながら、鬱蒼でわりと暗いはずだった森の風景が何故希望や可能性を感じさせてくれるのかという逆説な印象から始め、作品を制作した。

担当教員によるコメント

この森には静かな空気が漂っている。
真ん中に有る倒木には長い時をかけて苔が生え地面にまで広がっている。
何気ない日常が変わってしまった今、ゆったりとしたこの場所を描く作者の気持ちは見る者に色々な事を感じさせてくれるものがある。
この森は彼の心そのものである。

教授・八木 幾朗