行きと帰り, 今ここにいること

小林 美尋

作者によるコメント

私は一貫して風景を描いているが、私の思う風景とはこれといった一つに限定できるものではなく、様々な要素が絵画の中で絡み合うことで成立する。絵の中で起こったことは現実とはかけ離れているのだが、それは私が見てみたかった風景の形である。私たちは常に様々な場所を行き来しており、同じ場所を歩いても時間によって風景が変わる。様々な場所や時間を絵画の中で行き来することが私にとっての風景なのかもしれない。また、その風景の形はこれからも変わり続けていくだろう。

担当教員によるコメント

小林の2年生時の立体作品のことをはっきりと覚えている。それは身体を大きく超えるサイズで垂木を複雑に組み合わせた作品であった。その作品は小林自身が森に入った時の印象の再現だと言う。森の木々、足下の植物、息づく生物たち、それら対象と自らの身体との距離の変化、常に揺らぐ認識の差異を見事に捉えたものだった。その作品以来、彼の絵画は大きく変化したと思う。多層化する視点を一枚の絵画の中に構成し、新たな風景を創出する。それは単なるレイヤーの重なりではない。小林の絵画(風景)を見ていると、外から絵画を眺めていると言うよりも、見ている私自身もその絵画の中に取り込まれているように感じてしまう。それは小林自身がレイヤーの中に入り込み、絵画の内側から外の世界を描いているからなのだろうか。

教授・小泉 俊己

  • 作品名
    行きと帰り, 今ここにいること
  • 作家名
    小林 美尋
  • 作品情報
    『行きと帰り』
    素材・技法:キャンバス、油彩
    サイズ:H1455×W1120mm

    『今ここにいること』
    素材・技法:キャンバス、油彩
    サイズ:H1940×W2590mm(2枚)
  • 学科・専攻・コース